医療技術のめざましい進歩により、人々を多くの病気から救えるようになった。
これは、治療技術そのものだけでなく、早期発見に役立つ検査機器が発展したためとも言える。
全ての病気に共通することだが、早期発見の大切さについては誰もが納得している。
例えば、がんの中でも、進行が速いものだったら、日を追うごとにがん細胞が分裂していき、どんどん増殖することもある。
発見できずに見過ごしてしまうと、大変なことになる恐れが出る。
早期発見をするためには、症状がなくても病院へ出向き、専門の検診を受けること。画像診断などから詳しい体の状態を知ることができるためだ。
画像診断の方法も、レントゲン写真、CT検査、超音波断層検査などさまざまあるが、近年、PET検診ができる医療機関が増加している。
PET検査とは、細胞の機能の違いを画像化するもので、臓器の大きさや形を写す今までの画像診断機器の仕組みとは異なる検査。
がん細胞は他の細胞よりも活発化していることから、この方法により、がんが発見できる。実際の画像は濃淡のみで表される。
苦痛を感じることなく、一度で全身を調べることができ、今まで発見されにくかった小さながん細胞も発見することができる。 また、腫瘍が悪性か良性かを見分けることもできる優れもの。 その他の画像診断機器と組み合わせることで、精度がさらにあがる。
細胞のエネルギーの元になるブドウ糖に反応してがん細胞を発見する検査。
がん検診では、検査機器に入る前に、FDG(※)と呼ばれる検査薬を投入するが、これがブドウ糖の構造に似ているため、細胞が、勘違いをして取り込み始める。
しばらくすると、正常な細胞は満腹になるが、がん細胞はどんどん取りくみ続けるため、細胞に集積したFDG量をスキャンすることにより、がん細胞が発見できる。
他にも、狭心症、虚血性心疾患、てんかん、 アルツハイマー型認知症などの診断にも用いられる。
現在、乳がんの早期発見のために有用性が確立している検査方法に、マンモグラフィーがある。
視触診や乳房超音波(エコー)では見逃してしまいがちな、しこりになる前の状態も発見することができ、乳がん検診では必ず用いられる検査だ。
もちろん、PET検査も有用だが、がんの種類によっては発見されにくい場合もあるため、やはり、マンモグラフィーでの検診が重要とされている。
特に、乳がんの危険性が高まる30〜40代以上の女性には、1年に1回のマンモ検査が必要とされている。
このように、今まで見落としてしまいがちな病気の発見は、検査機器によって随分と改善されてきた。 私たちが定期的な検査を受けることで、さらに早期の発見率が高くなるだろう。 積極的に検診を受けて、未病発見に努めよう。
マンモグラフィー検査の仕組み 乳房X線検査とも呼ばれるように、乳房専用のX線検査。 検査には痛みを感じるが、10分程度で終了。生理前の胸が張る時期を避けると痛みは軽減する。 |
心身症とは、ある身体疾患の治療に関して、心理社会的要因を 考慮する必要がある場合に使われる言葉です。ここでは 実際の具体的な症例を挙げて、詳しくみていきましょう。
円形脱毛症は、自覚症状がなく、他人に指摘されて気づくケースが多く、日本では、ストレスによる心因説(心身症)が主流ですが、欧米では、アレルギー疾患や自己免疫疾患とされています。
さらに、ストレスがアレルギー症状を増幅させるため、アレルギーを心身症とする考えもあります。
これは、背景にアトピー性疾患があり、体内にできる抗体が毛根に悪さをして、脱毛につながるというものです。
一方、体を守る免疫機構が自らを攻撃し、脱毛を引き起こすというのが自己免疫説です。成人では、「ストレスが原因」と見られるケースが、かなりのウエイトを占めています。
円形脱毛症の人は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の合併率が高いとのデータもあります。
起立性調節障害は、小学生の高学年から中学生に起こりやすく、症状は午前中に強く、春から夏にかけて悪化する傾向が強いのです。
本人の苦痛は想像以上ですが、この病気はあまり理解されておらず、不登校と間違えやすいのです。
また、症状から風邪と診断されることが多く、慢性扁桃炎や虫垂炎と言われることもあります。
原因は、自律神経のバランスの崩れです。
立ち上がった時や長い間立っている時には、下半身に血液がたまりやすくなるので、自律神経の働きで下半身の静脈を収縮させ、血液貯留を防ぐのですが、調節できないと脳の血液量減少で、立ちくらみや脳貧血を招くのです。
大切な脳に血液を送ろうと心拍数が増え、動悸などの症状が出ます。思春期には、心も体も大きく変わり、特に身長が伸び、体にとって頭の位置が相対的に高くなります。
こうした変化に自律神経の働きがついていけず、失調を招くと考えられています。
車を運転中に、いきなり胸に圧迫を感じ、呼吸が荒くなって、激しい動悸がした。
汗が吹き出し、頭がフワッとして、恐怖感、不安感が強まった。
頭がおかしくなり、今にも死ぬのではないかと思った―と、パニック障害は場所を選ばず、突然起きるのです。
自律神経に絡んだ、いくつかの身体症状が出ますが、意識を失うことはなく、1時間ほどでおさまります。
診察を受けても、気のせい、過労とされることが多いのですが、何回も発作を繰り返すため、本人は気が滅入り、職場や学校でも「さぼっているのでは」「仮病だろう」「ノイローゼではないか」などと言われ、ますます辛い思いをするのです。
パニック障害の位置づけ
パニック障害は、むしろ不安神経症と関係があります。さらに、心臓神経症、神経循環無力症が挙げられます。
この病気では、動悸、息切れ、胸の痛み、呼吸困難、目まいなど循環器系の愁訴があるものの、病巣は見られないのです。
そしてもう一つ、過呼吸症候群とも関係があるのです。発作的に過剰な呼吸が生じるが息が吸えない、息苦しいなどの症状が出て、手足がしびれたり、こわばって不安・恐怖感が高まります。
意識障害や失神を伴うこともある、心因による機能的な病気です。心身症の周辺疾患と位置づけられます。
生理的なメカニズムでは、いくつかの仮説のうちで、脳の中の神経細胞同士の情報伝達に関与しているノルアドレナリンが過剰になっているという説があります。
ノルアドレナリンは、神経を興奮させる働きがあります。
逆に、神経活動を抑制する化学物質である
ギャバ(γ‐アミノ酪酸)の働きが低下しているとの考え方もあります。
パニック障害による主な症状(4つ以上が現れる) |
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・胸の痛み、不快感 ・息苦しさ ・めまい、足元がふらつく、気が遠くなる ・死への恐れ ・「気が狂う」ことや自制心を失うことへの恐れ ・非現実感、違和感、外界との分離感 ・顔や体が赤くなる(紅潮)、または悪寒 ・吐き気、腹痛、下痢 ・しびれ、ピリピリ感 ・動悸、心拍数増加 ・息切れ、窒息感 ・発汗 ・身震い、震え |
中性脂肪をためない食事法と食べた分のカロリーを消費する運動で、生活習慣病の危険因子のひとつ、中性脂肪を減らしましょう!
生活習慣病のさまざまな危険因子を引き起こすことで問題になっている中性脂肪。あなたは、規則正しい生活や栄養バランスのとれた食事に気をつけているでしょうか。
今は症状に現れなくても、ついつい高脂肪の食事を食べ過ぎてしまうことで、中性脂肪はいつの間にか体についていくのです。
年をとってから、生活習慣病、特に死の四重奏と呼ばれている糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満にならないためにも、今から中性脂肪をためない、または落とす生活習慣を身につけておきましょう。
中性脂肪は運動量よりも食事量が増えると体につきやすくなります。
脂肪の蓄積は、一人ひとり、体の熱の燃えやすさや吸収率、基礎代謝の違いによっても異なります。そのため、同じ体重で同じ量の食事を摂っていても基礎代謝が高ければ太りにくい体質を持っていることになります。
まず、自分の体質に合ったカロリーを摂取することを心がけましょう。
自分が摂ることのできるカロリー量は、1日の総エネルギー量を目安にします。総エネルギー量とは、生命維持に必要な基礎代謝、生活活動に必要な活動代謝などを含んだエネルギー量のことです。
◆簡易計算法
1日に必要な総エネルギー(kcal)
=標準体重(s)×30〜40(kcal)
◎肥満者は20〜30(kcal)
※標準体重(s)
=体重(s)÷(身長(m)× 身長(m))
◆もっと詳しく知るなら
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」を
参考にすることができます。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/11/h1122-2.html
個人の生活活動の程度、性別、年齢別などから、自分に最も近い総エネルギー量が求められます。
もし、食事を摂り過ぎていれば食事を控えるか、または過剰な分を運動で消費します。 とにかく、食事の量と運動の量のバランスを保っていれば、中性脂肪をためてしまうことはないのです。
「1日の総エネルギー量を目安に」と言っても、食事を作るたびに細かなカロリー計算をしていると、なかなか長続きしないもの。
そこで、最初は目分量で食事をすることをお勧めします。
○ごはんは茶碗一杯
○メインのおかずは手のひら に乗る程度
○野菜のおかずを一品増やす。
ここから始めることで、徐々に正しい食事の摂り方の習慣が身に付いてくるでしょう。
また、摂り過ぎに注意したい栄養素は
○コレステロール
○ナトリウム(食塩)
これらは体に蓄積されやすいためです。
不足に注意したい栄養素は
○食物繊維
○nー3系脂肪酸(魚類)
○カルシウム
○カリウム
つまり、肉類の油ものを控え、野菜を多く摂ることを心がけましょう。
他にも、会話を楽しみながら食事をすることでおいしくいただくこと、1日3回決まった時間に食事をすることなど、おいしさの環境をつくることも大切です。
○主食、主菜、副菜、汁物の定食をイメージして食事を摂る。
○塩分は少なく、カルシウムを多めに。
○大豆食品、魚、肉、卵のたんぱく質をバランス良く食べる。
○旬の食材を使って野菜たっぷりに。
○早食いを控え、腹八分目にする。
エネルギーは筋肉を動かすことで消費されます。 1日中座ったままでは、なかなかエネルギーは消費されません。まずは、できることから始めてみましょう。
お勧めはウォーキング。
血圧が安定し、中性脂肪が減り、血糖をコントロールできると言われています。
まさに生活習慣病の危険因子を減らすための最適な運動法と言えます。
1日の目安は7千歩から1万歩。
これからウォーキングを始める人は、腰や膝を痛めないように、10分歩くことから始めましょう。
徐々に1万歩を目指して、体を慣らしていきましょう。
すでに中性脂肪が多い方は、中性脂肪を減らすことで体が楽になり、今よりももっと元気に過ごすことができるでしょう。
1日単位で考えず、2日単位(今日食べ過ぎたら、明日、運動する)で食事量と運動量のバランスをとっていくと、ストレスが減ります。
毎日、体重計に乗る習慣も付けると良いでしょう。
中性脂肪を増やさない生活を身につけて、元気に年を重ねましょう。
古の聖書の時代から、歴史に名を刻むイスラエル。地中海の南東沿岸域に位置する小さな国です。
ユダヤの人々は、2000年に及ぶ離散、そして戦いの連続を、民族の固い絆で乗り越え、父祖の地イスラエルへの帰還を果たし、悲願であった建国を実現しました。
古代と現代が調和した、異文化の魅力にあふれた国、イスラエルをご紹介します。
エルサレム東部には、約1キロ四方の城壁に囲まれた旧市街地を含み、約2000年前に破壊されたユダヤ教の神殿跡地「神殿の丘」があります。
そして、その神殿の一部だった
「嘆きの壁」(西の壁)は、ユダヤ教にとって最も重要な聖堂です。
ユダヤ教の聖地・「嘆きの壁」
一方、イスラム教は、「神殿の丘」を 「ハラム・アッシャリーフ(高貴な聖域)」という名で呼び、中でも黄金の「岩のドーム」と「アル・アクサ」の2つのモスクは、教祖モハメット昇天の地と伝えられる場所に建てられ、メッカ、メディナに続く重要な聖地としています。
イスラム教の聖地・「岩のドーム」
また旧市街地には、イエス・キリストが十字架を背負って歩いた「悲しみの道(ヴィア・ドロローサ)」が、 ゴルゴダの丘まで続き、そこに建つ「聖墳墓教会」がキリスト教の聖地とされています。
このようにユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3大宗教の聖地が混在し、しばしば宗教間の争いを起こしながらも、今尚、信徒たちが崇拝を続ける奇跡の地といえます。
イスラエルを建国したユダヤ人の多くを始め、世界で約1800万人が、世界最古の宗教「ユダヤ教」の信徒であるとされています。旧約聖書の教えを基に、敬虔な信徒は613ヶ条にものぼる戒律を守りながら、自分に厳しく暮らしています。
例えば、食事は豚や鱗(うろこ)の無い魚を食べてはいけないことや、毎週金曜の日没から土曜の日没まで行われるシャバット(安息日)、この間は一切の仕事を止め、交通機関、店の営業なども休止して祈りの時間に捧げます。
またユダヤ教の祈祷所であるシナゴーグは、
聖地エルサレムの方向を向いて建てられています。
しかし最近では、シャバットに開店している大手スーパーが現れ買物客で賑わい、また近隣の国々へ週末の短期旅行などに出掛ける人も増え、時代の流れと共に宗教観が薄れ、教育や世俗化による社会変化がみられます。
日本人には、宗教的にも理解が難しい部分が多いと思うのですが、「聖書」という言葉について、日本では「旧約聖書」や「新約聖書」を同一に解釈している傾向があります。
しかしユダヤ教徒は、旧約聖書のみが唯一の聖典であり、それしか認めず、新約聖書を目にすることもありません。
キリスト教徒は、両聖書が一緒になった日本でも一般的に見掛ける形の聖書を読みますが、信仰として復読・暗唱するのは、新約聖書を主体としています。
イスラム教徒にとっての聖典は、旧約聖書、新約聖書、そしてコーランの三つでしたが、現在ではコーランを唯一の聖典としています。
これら3宗教は、共通の絶対神(イスラム教では「アラー」と呼ぶが同じ神)の預言(啓示)をもとにして生まれた宗教と言われていますが、異なる民族・宗教・人種が対立しながらも共存し、現在も共生の道を探り続けています。
キリスト教の聖地「聖墳墓教会」