今までは、中高年の健康増進として、生活習慣病の予防などに役立つ有酸素運動が中心に行われてきた。
さらに、今、日常の中で行える簡単な筋力トレーニングを加えることで、歩く、立つ、座るなどの動作をスムーズにし、転倒防止にも役立つことが分かってきている。
体には、心筋、平滑筋などの自分の意志では動かせない筋肉と自分の意志でコントロールできる骨格筋がある。骨格筋は何十万本という筋繊維からできていて、白筋と赤筋の二種類がある。その名の通り、白く見える筋肉と赤く見える筋肉で、白筋は走ったり、跳んだり、瞬間的な運動に使われ、酸素を運動エネルギーに変えることができる、疲労しにくい筋肉。赤筋は歩いたり、立ったり持久型の運動に使われ、無酸素エネルギーを使う、疲労しやすい筋肉。
それぞれの筋肉は使わないと、萎縮または消滅してしまう。年をとると共に、敏捷性が低下するのも、このことが原因になっている。そのため、筋肉を鍛えることで運動能力を高めることができる。
赤筋は普段の生活で使われ、ウォーキングなどの有酸素運動によっても鍛えられるが、白筋は普段使わないため、意識しないとなかなか鍛える機会がなく、萎縮しやすい。そのため、高齢者に多い転倒やぎっくり腰の防止のためにも、白筋をいかに鍛えるかが、長生きできるポイントになる。
※筋力トレーニングを行う前には、必ず、ストレッチを行う。 |
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上部腹筋を鍛える 肩から肩甲骨の辺りが床から離れるように上体を起こす。 |
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腸腰筋を鍛える 仰向けに寝て、膝を伸ばしたまま、片脚を床から上げる。(左右交互に5回程度行う。) |
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下腿三頭筋を鍛える いすの背もたれを持って立ち、かかとを上げる。 |
白筋を鍛えるためには、筋力トレーニング(レジスタンス運動)を行うと良い。ただし、筋力だけを鍛えれば良いのではなく、肥満予防にも勧められている有酸素運動に組み合わせることで、敏捷性が高まり、糖尿病の予防にもなるという報告がある。
高齢者の場合、筋力トレーニングと言っても、少しの刺激だけでも効果があると言われている。トレーニングは連続で行うより、週に数日の休みを設けながら行うと、効果が上がる。
厚生労働省が推進している「健康日本21」でも筋力トレーニングが推奨され、高齢者の目標例が次のように紹介されている。
それぞれの健康状態や運動能力によって安全に正しく行われることが大切。無理をせず、最初は軽い負荷から始め、習慣づけることで健康な体を維持していきたい。
日本人に痴呆や寝たきりが多い理由は、脳血管障害が欧米に比べて極めて多い点にある。したがって、その原因となる高血圧を予防することが重要である。
どの程度の高血圧ならば、生活習慣の改善で回復できるかは、図Tに示されている。
1999年に世界保健機構(WHO)と国際高血圧学会(ISH)が示した重症度の判定基準は、表Tのように血圧値を5段階に分けている。正常血圧の下にさらに至適血圧として収縮期血圧120oHg未満、拡張期血圧80oHg未満を設け、また境界域高血圧として140〜149/90〜94が定められている。
収縮期と拡張期の血圧が同じ区分に入らない時には、重症な方をとる。例えば、血圧値が、175/95である場合には、軽症でなく中等症とする。予防には危険度が重要なので、他の危険因子と病歴を合わせて危険度を層別化する。他の危険因子がない高血圧は軽症、中等症、重症をそれぞれ低リスク、中等リスク、高リスクとされる。
図T米国合同委員会第6次報告(JNCVI)指針
による血圧分類と治療指針
高血圧の大部分は、本態性高血圧と呼ばれて、発症には、多数の未知の遺伝子が関係していると考えられている。この他、他の疾患に伴う症候性の高血圧もわずかながらある。本態性高血圧も生活習慣病の一部であるから、これに血清総コレステロール、尿糖、肥満も加えて考慮する。血圧は、これまでの医療で考えられていた目標値よりも低い130/85oHg未満が理想であるという。
1997年の軽症高血圧の大規模介入試験では、食塩を6〜7g/日に抑えて野菜・果物を増やし、脂肪を制限するだけで降圧剤なしに収縮期血圧を5.5oHg低下させることができたと報告されている。
1日に6〜10グラムの食塩摂取では、収縮期血圧は5.4oHg、拡張期血圧は6.5oHg低下する。日本では厚生労働省が、食塩10g/日としているが、欧米では6g/日となっている。
循環器の専門学会が推奨する一次予防を表Uに要約できる。最近では、家庭用血圧計が普及しているので、患者さんが自ら、このような予防療法の効果を判定できるようになった。
肥満と血圧の関係は、体重1sの増加で血圧が、1〜1.5oHg上昇する。そこで、適正体重を維持するために、1日30〜45分の速歩に相当する運動がすすめられている。さらに、過剰栄養のバランスを満たす必要がある。1日800kcalの低エネルギー食では、60%の人が3週間で血圧が正常化するという研究がある。特に、カリウム2g/日以上とマグネシウム300r/日以上を摂取し、喫煙と過剰飲酒を避ける。
魚介類のタウリンにも降圧の効果がある。このような運動、栄養療法を半年間行って効果が現れない場合には、合併症のない人でも降圧剤が必要になるのである。
表T 血圧値の重症度分類(WHO/ISH)
重症度 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 |
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正常血圧 | 130未満 | 85未満 |
正常高値 | 130〜139 | 85〜 89 |
軽症1) | 140〜159 | 90〜 99 |
中等症2) | 160〜179 | 100〜109 |
重症3) | 180以上 | 110以上 |
※別名 1)グレード1 2)グレード2 3)グレード3
表U 高血圧の食事療法(米国合同委員会第6次報告)
1 | 食塩制限→ナトリウム摂取量を1日100mmol(食塩約6g)以下に制限する。(日本では10g以下を目標に食塩の多い醤油、味噌、塩蔵食品などを制限) |
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2 | カリウム摂取→1日90mmol以上の摂取を推奨する。 (野菜類を指定量摂取すれば充足できる) |
3 | マグネシウム、カルシウムを十分に摂る。 |
4 | アルコール制限→1日当たりエタノール換算で30ml以下に制限する。(アルコール量はビール5%、ワイン12%、清酒16%、ウイスキー40%) |
5 | 適正体重の維持→エネルギー制限と運動 (BMIを22に保つ。1日9000歩) |
6 | 禁煙と脂質制限で心血管疾患を予防する。 (脂質については1日の総エネルギー量の25%以下とする) |
生活習慣病やアトピー性皮膚炎、喘息の病気がストレスなどの心と関係があるとも言われています。密接につながっている心と体の仕組みを考えてみましょう。
私達が健康を損ねる理由には様々あります。気候の変化による外的な要因や、体質的なもの、また、食生活の乱れや運動不足、睡眠不足などの生活習慣の乱れからでも、病気になることがあります。
そして、「病は気から」という言葉があるように、「心」からも、体調を崩すことがあります。例えば、イライラした状態が続くと、胃が痛くなり、胃潰瘍などの病気になる経緯は、多くの人が知っているでしょう。
現代の心の問題と言えば「ストレス」。ストレスは、自律神経を乱れさせ、免疫力や抵抗力などに影響を与えることが分かっています。胃腸の不良、肩こりなどの不調がストレスから起こることもあるのです。
東洋医学では、体調を崩し、病気になる原因を大きく @外因、A内因、B不内外因 に分けています。
それぞれ、前述の理由にも当てはまりますが、外因は体の外部から侵入してくる「病邪」(気候の変化などの環境的因子)、内因はその人の「体質」(生まれ持った体質や精神状態)、不内外因は、外因でも内因でもない「生活習慣」を指します。
内因については、人の感情を「喜・怒・思・憂・悲・恐・驚」の七種類に分類した「七情」の考えがあります。普段、私達はあらゆる感情を持って生活をしています。適度な感情の変化はむしろ、健康である証拠。
しかし、ある感情が過度になったり、長時間持続したりすると、健康状態に影響を与えてしまうのです。つまり、精神のバランスが乱れると、病気を引き起こしやすくなるのです。
健康な人の心と体 | 病気の人の心と体 |
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さらに、東洋医学では、七情は特定の臓腑(五臓)と関係していると考えます。喜は心臓、怒は肝臓、思は脾臓、憂と悲は肺臓、恐と驚は腎臓に属しているため、ある感情が過度になると、それに対する臓腑に関する病気が引き起こされると言われています。
精神が臓腑に影響を与える反対に、臓腑が精神に影響を与えることもあります。臓腑の不調が感情のバランスを崩し、さらに、臓腑へ影響を与えるという悪循環にもなりやすいのです。
心と体は別のような気がしますが、このように深く、密接につながっています。気が落ち込んでいるときは病気になりやすいもの。また、反対に体の調子が悪いと気分も沈みがち。心または体のバランスが崩れそうになったとき、この関係を知っていれば、悪循環を未然に防げるでしょう。心と体のバランスを整えて、健康な生活を送りましょう。
七情(しちじょう)と体の関係
七情 | 五臓 | 気の変化 | 体調の変化 |
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喜ぶ | 心臓 | 気が緩む | はしゃぎ過ぎると、心臓や脳に影響が出る。
心が緩み、集中ができなくなる。
<症状>動悸、息切れ、不眠、ヒステリーなど。 |
怒る | 肝臓 | 気が上がる | イライラなどのストレスは血圧が上がる。 <症状>ヒステリー、頭痛、めまい、のぼせ、神経痛など。 |
思う | すい臓 | 気が結ぶ | 考え過ぎると、やる気が出なくなり、食欲不振、消化不良に。 <症状>下痢、便秘、胃痛、消化不良、食欲不振、肌荒れなど。 |
憂う | 肺臓 | 気が消える | 悲しみや憂うつなど、気が沈むと呼吸器系に影響が出る。意気消沈する。 <症状>せき、のどの痛み、鼻づまり、息切れなど。 |
悲しむ | |||
恐れる | 肝臓 | 気が下がる | 過度の恐怖で成長と発育のエネルギーに影響を与える。 <症状>意欲が湧かない、思考力の低下、めまい、頭痛など。 |
驚く | 気が乱れる | 過度の恐怖で成長と発育のエネルギーに影響を与える。 <症状>意欲が湧かない、思考力の低下、めまい、頭痛など。 |
古の聖書の時代から、歴史に名を刻むイスラエル。
地中海の南東沿岸域に位置する小さな国です。
ユダヤの人々は、2000年に及ぶ離散、そして戦いの連続を、民族の固い絆で乗り越え、父祖の地イスラエルへの帰還を果たし、悲願であった建国を実現しました。
古代と現代が調和した、 異文化の魅力にあふれた国、イスラエルをご紹介します。
世界3大美女のひとりとして有名なクレオパトラ。彼女の美しさの秘密は、死海の水にあったという説があり、ローマ帝国のアントニオに忠誠を誓った報償として、死海資源の独占権を要求したとも語られています。また、古代ユダヤ帝国のヘロデ大王は、持病であった皮膚疾患を死海の温泉で完治させたと伝えられています。
死海の泥で全身パック
死海の周辺は、亜熱帯性気候により空気は乾燥し、周囲は砂漠で森林や都市もなく、花粉などのアレルギー因子や、人工的な汚染から完全に隔離された理想的な保養地であるといえます。
死海の水はミネラル分が豊富で、地中海の約10倍という濃厚な海水であり殺菌効果も高く、皮膚疾患やリウマチからくる関節疾患、アトピーなどのアレルギー疾患などにも優れた効果をもたらすといわれています。豊富なミネラルを多量に含んだ死海の泥は世界的に有名で、マッドパックとして死海の保養施設で利用されたり、化粧品の原材料として世界中に輸出されています。
死海でのリラクゼーション効果として、湖面にプカプカと浮く不思議な感覚の中で心身のリラックスを得ることが出来ます。その大きな要因として酸素濃度の濃さがあげられます。死海は海抜マイナス400mの断層帯の底にあり、平地より約20%酸素濃度が高く、心拍数を減少させて小脳や肺を休める効果が期待できます。
また、死海の海水が蒸発し、死海の上空にイオン化された薄い靄が発生し、天然のフィルターとして肌に有害な紫外線がカットされ、強烈な日差しを浴びても、肌を痛めることなく日光の恩恵を思う存分受けることが出来ます。
死海で浮遊体験を楽しむ人達
このように『死海』と言う不気味な名前が付いているにもかかわらず、約4000年も前から「生命」と「癒し」の源として、またその水は美容と健康および皮膚病・傷、その他多くの病気に有効であることが認められ、世界的にも高く評価されてきました。
死海は、人工では決してつくることのできない自然の保養地であり、美容や健康づくり、各種疾患の療養に世界の人々が訪れるユートピア・リゾートなのです。
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死海周辺には、さまざまな史跡旧跡が点在します。
エルサレムから死海への途中には、海抜マイナス350m、死海の北西部に位置し世界最古の街と言われるオアシス『エリコ』があり、そこにはキリストが悪魔から試練を受けたとされる「誘惑の山」があります。
そこから死海に沿って南下し、死海の湖面が見えてくると、死海写本という世界最古のユダヤ教経典が発見されたことで知られる『クムラン』に着きます。
そして更に下ると、砂漠の中にあって泉や滝、緑に囲まれた美しいオアシスで国立公園にもなっている『エン・ゲディ』に到着します。
そして更に南下を続けると、ユダヤ民族結束の象徴とも云える、古の悲劇の舞台『マサダ』や、「ロトの妻の塩柱」でも知られる岩塩の山『ソドム』を臨むことが出来ます。
死海はその周辺一帯を含め、イスラエルの名物観光コースとして観光客で賑わい、今も昔もその魅力に多くの人々が虜になっています
動植物の宝庫である、砂漠のオアシス「エン・ゲディ」