世界的に増加傾向にある『肺がん』。日本でも、1993年からは胃がんに代わって、男性のがん死亡率の中でも第1位となっている(女性は第2位)。
原因は全て解明されてはいないが、やはり、喫煙が大きな要因となっているようだ。
気管、気管支、肺胞の細胞が正常機能を失い、無秩序に増えて発生する「肺がん」。女性よりも男性に多く、今なお、増加し続けている。2015年には日本で肺がんの1年間の新患者数が男性で11万人、女性で3万7千人になるとも予想されている。そのためにも、早期に発見できる場合が多い「肺がん検診」はとても大切だ。
症状は種類によって少しずつ変わってくるが、一般的に、風邪などの症状と区別がつかないことが多い。具体的には、なかなか治りにくい咳や胸痛、呼吸時のゼーゼー音(喘鳴)、息切れ、血痰、声がれ、顔や首のむくみなどが挙げられる。
扁平上皮がんや小細胞がんのような肺門型の肺がんは、比較的、早期に咳、痰、血痰が出やすいが、他は初期の自覚症状がほとんどないため、
気になる症状があったら、医療機関で受診をした方が良い。
治療法は主に、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法の3種類。がんのある場所、進行度、その他の病歴などによって選択される。
肺がんの大きな要因とされている「喫煙」。特に、小細胞がん、扁平上皮がんは深く関わっていると言われている。
一般には、『※重喫煙者は肺がんの高危険群(リスクの高い人)』と言われている。また、非喫煙者と比べ、毎日喫煙する人は約4.5倍、20歳以下に喫煙を始めた人は、約6倍のリスクを伴う。
これらから、たばこを多く吸う人、毎日喫煙する人、喫煙の開始年齢が若い人ほど、肺がんになるリスクが高くなると言える。
ただし、肺がんの10〜20%は喫煙と関係がないと言われている。大気汚染や他の環境要因、放射性物質、アスベストなどの関係性も指摘されているが、喫煙は、本人だけでなく、受動喫煙といって、周囲の人にも影響を及ぼすことも考えなければならない。
喫煙開始年齢別にみた肺がん、全がん、全死亡標準化死亡率
喫煙開始年齢 | 観察人数 | 肺がん | 全がん | 全死亡 |
---|---|---|---|---|
〜19 | 128,322 | 137.6 | 609.0 | 2,082.6 |
20〜24 | 768,329 | 114.0 | 571.5 | 1,974.3 |
25〜29 | 115,902 | 98.9 | 571.5 | 2,005.4 |
30〜34 | 38,146 | 57.1 | 494.8 | 1,752.7 |
35〜 | 28,226 | 32.9 | 390.9 | 1,878.6 |
非喫煙 | 310,506 | 24.1 | 347.0 | 1,541.1 |
禁煙後の年数別にみた肺がん、全がん、全死亡標準化死亡率
禁煙後の年数 | 観察人数 | 肺がん | 全がん | 全死亡 |
---|---|---|---|---|
0〜4 | 23,305 | 48.9 | 514.7 | 2,024.9 |
5〜9 | 13,851 | 38.3 | 504.3 | 1,807.9 |
10〜 | 17,199 | 33.3 | 330.2 | 1,407.4 |
非喫煙 | 310,506 | 24.1 | 347.0 | 1,541.1 |
※男性S41〜51/人口10万人対(がん研究振興財団『がんの統計'03』より)
※重喫煙者=1日の本数×喫煙年数=喫煙指数が600以上の人
参考資料:国立がんセンター
肺がんは、がん細胞のタイプによって「小細胞がん」「非小細胞がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん)」の4種類に分けられます。
これらは、その種類によって、できやすい場所があり、治療には、進行状態、種類によって、それぞれに最適な処置が施されます。
がんの初期では自覚症状がないことがほとんどです。早期発見のため、定期的な検診を心がけましょう。
◆小細胞がん
悪性度が高く、進行が速いがんです。
◆腺がん
がん細胞が管のような形(腺管)をしていて、粘液を分泌する性質があり、最近増える傾向にあります。
◆扁平上皮がん
がん細胞が皮膚の組織のように、扁平な形をしています。
◆大細胞がん
肺がん全体の5〜10%程度ですが、進行が速いのが特徴です。
外科手術と放射線療法は、がんの病巣が、小さい場合に行われる局所的な治療で、転移の有無によっても判断されます。転移がわずかな場合には手術が行われ、転移があって手術ができない場合には、放射線療法や化学療法が行われます。
レーザー治療
がん細胞に集まりやすく、特定の光線に反応する性質のある物質を、患者さんに注射します。2〜3日後に、気管支内に挿入した内視鏡の先端から、レーザーを照射して、その物質に化学反応を起こさせ、がん細胞を破壊します。肺門部にできた早期がんに適用されます。
化学療法と放射線療法の効果
小細胞がんの場合、手術ができる早期の段階で発見されるケースはわずかです。進行度がU期からV期の場合、化学療法と放射線療法が行われますが、以前に比べ、かなり治療効果が進歩しています。この段階では、30〜40%が治癒するようになったのです。
抗がん剤の進歩
1990年代に、VNL(ビノレルビン)、PAC(パクリタキセル)、DOC(ドセタキセル)、GEM(ゲムシタビン)、CPT‐11(イリノテカン)などの新規抗がん剤が導入され、従来の治療法と比較して生存期間の延長が得られたものの、治療成績は不良であるのが現状です。
支持療法
最近では、抗がん剤の副作用の症状を軽くする治療法が研究され、カロチノイドの投与もその一つとして効果をあげています。
健康診断は、自分の健康を知るためにとても良い方法です。病気の原因となる危険因子を早期発見でき、自覚症状が出ないうちに生活習慣を見直して、病気を未然に防ぐことができます。
自分の健康は自分で守るもの。自分のため、家族のためにも、検査結果は素直に受け止め、異常があった場合、生活習慣の改善に役立てることができます。異常がなかった場合でも、現在の健康を維持できるようにしましょう。
「健康で生活すること」は私たちの願いです。
検査の基準値は、一般的に健康であると言われている人達の平均値で、結果には個人差があります。細かい数値に神経質になるより、健康診断は定期的に受け、継続することが大切。自分の正常値を知っておくと、異常値があれば、すぐに発見することができます。そのためにも、年に1回は健康診断を受け、検査結果は記録・保管しておくことが望ましいでしょう。
また、精密検査を受けたり、通院中であっても、健康診断を受けると、より効果的に自分の健康を知ることができます。毎回、同じ検診機関で検査を受け、かかりつけ医を持ち、相談できる医療機関があると安心です。
検査項目 | 基準値 | 基準値でない場合に 考えられる病気 |
---|---|---|
肥満度 (BMI) | 20.0〜24.0 | 肥満、糖尿病、高脂血症 |
体脂肪率 | 20.0〜27.0 | |
血圧 | 最高140mmHg以下 最低90mmHg以下 |
動脈硬化、脳出血、 脳梗塞など |
総コレステロール | 150〜220mg/dl | (高いと)動脈硬化、 糖尿病 |
中性脂肪 | 35〜150mg/dl | 動脈硬化 |
LDLコレステロール
(悪玉コレステロール) |
70〜139mg/dl | 動脈硬化 |
HDLコレステロール (善玉コレステロール) |
40mg/d・以上 | (低いと)
動脈硬化、 心疾患の危険 |
AST(GOT) | 8〜40IU/l | 肝炎、脂肪肝、
アルコール性肝炎、
肝臓がん、心筋梗塞 |
ALT(GPT) | 5〜35IU/l | |
GGT (γ-GTP) | 1〜80IU/l | アルコールによる 肝機能障害 |
血 糖 | 70〜110mg/dl (空腹時) |
糖尿病 尿 |
酸 | ♂2.9〜7.2mg/dl ♀2.3〜5.4mg/dl |
痛風、腎機能障害、 高血圧 |
尿 糖 | 陰性(−) | 糖尿病、肝機能障害 |
●肥満度(BMI)
肥満の判定をします。
身長あたりの体重指数(BMI:body mass index)=体重(kg)/{身長(m)×身長(m)}
肥満は体に必要以上の脂肪がついた状態をいい、高血圧や糖尿病等の生活習慣病の温床になります。BMI値が高い場合、食生活の改善と運動を中心とした減量を実行してみましょう。
BMI | 判定 | |
---|---|---|
〜18.4 | → | 低体重 |
18.5〜24.9 | → | 普通体重 |
25.0〜29.9 | → | 肥満(1度) |
30.0〜34.9 | → | 肥満(2度) |
35.0〜39.9 | → | 肥満(3度) |
40.0〜 | → | 肥満(4度) |
●体脂肪率
体重に占める脂肪の割合で、体脂肪の状態を知ることができます。見た目がスリムでも、実は体脂肪率が高かったり、太って見える人が適正であると判断されることもあります。
女性 | 男性 | |
---|---|---|
20%未満 | 低い | 15%未満 |
20〜25%未満 | 適正 | 15〜20%未満 |
25〜30%未満 | やや高い | 20〜25%未満 |
30%以上 | 高い | 25%以上 |
●血圧
運動や精神面などの影響を受けやすいので、1回の血圧測定では判定しにくいこともあります。定期的に血圧をチェックすることをお勧めします。「高血圧」と判断された場合、食生活や運動等の日常生活の改善を行いましょう。
最高血圧 | 最低血圧 | |||
正常圧 | 至適血圧 | 〜119 | および | 〜79 |
正常血圧 | 120〜129 | および | 80〜84 | |
正常高血圧 | 130〜139 | および | 85〜89 | |
高血圧 | 軽 症 | 140〜159 | または | 90〜99 |
中等症 | 160〜179 | または | 100〜109 | |
重 症 | 180〜 | または | 110〜 |
●総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール
これらを調べる検査を血中脂質検査といい、高脂血症の診断をします。コレステロールには動脈の壁にたまって動脈硬化を起こす悪玉(LDLコレステロール)と、その悪玉を運び去る善玉(HDLコレステロール)があります。総コレステロールはおよそ、両方を合わせたものと考えることができます。また、食事で摂ったエネルギー源が運動不足などで余ると、脂肪として体内に蓄積されます。この脂肪のことを中性脂肪といいます。
●尿酸
酸素、水素、炭素、窒素の分子からできるプリン体と呼ばれる物質のひとつです。尿酸は誰の体の中にもありますが、何らかの原因で血液中の尿酸の濃度が上がると、溶けきれなくなり、体に蓄積されます。
●血糖、尿糖
血糖は血液中のブドウ糖です。糖尿病になるとインスリンが不足して高くなります。血糖値がある値を超えると、尿糖は陽性(+)になります。これらは、食事の時間や1回の検査では糖尿病とは診断できません。
●GGT(γ−GTP)
肝細胞膜に存在します。アルコールに敏感に反応し、脂肪肝、胆道疾患があると、増加します。
●AST(GOT)、ALT(GPT)
肝臓、心臓、筋肉などに多く含まれる酵素です。肝臓の細胞などが病変により破壊されると、これらの酵素が血中に増加します。ASTは肝臓と心臓の病気の指標として、ALTは肝臓や胆道の病気の指標として使われ、両値の比較で、おおまかな肝疾患の程度を知ることができます。
古の聖書の時代から、歴史に名を刻むイスラエル。地中海の南東沿岸域に位置する小さな国です。
ユダヤの人々は、2000年に及ぶ離散、そして戦いの連続を、民族の固い絆で乗り越え、父祖の地イスラエルへの帰還を果たし、悲願であった建国を実現しました。
古代と現代が調和した、異文化の魅力にあふれた国、イスラエルについて、あまり知られていない側面も含め、ご紹介します。
紀元70年に、ユダヤの人々がローマ帝国のティトス将軍によって、国を追われて以来、幾世紀にもわたる流浪に耐え、帰還を果たすことを夢見た「約束の地」がイスラエル。そして1948年、ユダヤ民族は再び結集し、理想の国を築きあげました。
イスラエルは、半乾燥の風土を持つ、日本の四国ほどの面積の細長い帯状の小さな国です。西は地中海に面し、北はレバノン、シリア、東はヨルダン、南はエジプトと国境を接しています。気候は、ハイファやテルアビブなどが位置する地中海側と、エルサレムがある中部は、ギリシャ、イタリアなどと同様の地中海性気候となり、死海周辺の東部は砂漠気候となります。
11月から5月までが雨季で、これ以外の季節は乾季となり、雨はほとんど降りません。湿潤気候と乾燥気候の境目に位置しており、太陽の恵み豊かな地です。
狭い国土の中には、手つかずの雄大な自然が広がり、地理上の特色で、山脈や高原、肥沃な畑や、切り立つ崖、砂漠、土漠といった荒涼とした土地もあり、景観は変化に富んでいます。
国内の至る所に宗教上の歴史的建造物、考古学上の遺跡が数多く残され、欧米をはじめ、世界中から多くの人々が観光に訪れます。
ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地として名高いエルサレムはイスラエルの首都で、政治、文化の中心です。
エルサレム市街
アジア、ヨーロッパ、アフリカの3大陸の接点に位置し、西洋と東洋を結ぶ掛け橋である、この独特な国には、約600万の人々が住んでいます (8割がユダヤ人で、残りのほとんどはアラブ人)。
現在、日本から9200q離れたイスラエルへの直行便はなく、乗り継ぎでしか行くことはできません。決して近い場所ではありませんが、悲劇の民ユダヤ民族の魂の息吹、その上に築かれた歴史の重みを感じさせてくれる魅惑の地です。
普通の観光では味わえない感動に巡り会えるはずです。あなたも一度足を運んでみませんか。
岩山がどこまでも続くイスラエルの大地